四季彩綴り

安楽寺の皐月

00安楽寺21

  1. 鹿谷
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鹿ヶ谷に法然院と並び立つ安楽寺。
通常は非公開の寺院ですが、春(ツツジやサツキ)、夏(7月25日のかぼちゃ供養)、秋(紅葉)に特別公開が実施され、今回はサツキの咲く6月5日、特別公開最終日にお邪魔してみました。



01安楽寺01門前



02安楽寺02門前

晩秋には散紅葉で覆い尽くされる石段には、輝く青葉のアーチが。




03安楽寺03門前額縁



04安楽寺04

門をくぐるや現れる極楽浄土を髣髴とさせる花の庭園
しかし、この美しい風景とは裏腹に、この寺には過酷で悲痛な歴史が残されていました。


安楽寺は正式名称を住蓮山安楽寺と言い、これは住蓮と安楽という二人の僧の名からとられたもの。彼らは浄土宗の開祖・法然の愛弟子でした。

世は鎌倉時代初頭。
平安時代末期に末法思想が広まり、宇治の平等院を始め貴族階級が造寺造仏に明け暮れ、その功徳で極楽往生を遂げようとした旧来からの貴族のための仏教に対し、ただ「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで天下万民が等しく救われると説いた法然の専修念仏は、これまでないがしろにされて来た武士や庶民、女性の間で急速に広まり始めていました。

その布教手段として大きな役割を果たしたのが、阿弥陀仏の教えに謡曲の節回しを付した声明(しょうみょう)を美声の住蓮・安楽が誦ずる念仏会で、そのあまりの美しさに魅了されて出家を希望する者が後を絶たなかったとも言います。

その中の一人、いや二人に松虫姫と鈴虫姫という姉妹がおり、後鳥羽上皇に仕える寵厚い女官でしたが、彼女達もまた妍を競い鎬を削る後宮生活に疲れ、いつしか心の平安を出家に求めるようになっていました。やがて、上皇が熊野参詣に出掛けたその留守の隙をついて草庵に駆け込み、出家受戒を懇願。住蓮と安楽は上皇の許しを得てからと滾々と諭しますが、二人の並々ならぬ決死の願いに心を動かされて、ついに住蓮が松虫姫を、安楽が鈴虫姫を剃髪。松虫姫は19歳、鈴虫姫は17歳で出家を遂げることとなりました。


と、ここまでですと『平家物語』の祇王や『源氏物語』の浮舟などのエピソードとちょっと似通った話というぐらいのものですが、この後に悲惨な末路が…。


熊野から帰還して二人の出家を知った後鳥羽上皇は当然の如く大激昂。
住蓮を近江で、安楽を京都六条河原で打ち首にしただけで飽き足らず、これに連坐して師の法然を讃岐へ、親鸞ら兄弟弟子も越後他へ流罪、そして専修念仏も全面禁止という苛烈な裁可が下ることになりました。

まだ年若く少し分別の足りなかった姉妹に振り回された形で、思いがけず起きてしまった流血の惨事。とはいえ、これも体の良い口実で、要は「出る杭は打たれる」の例で、新興勢力を排除したい南都北嶺の僧徒らからの再三の要請を受けての弾圧に他なりませんでした。

しかし、たまったもんではないのはその元凶となってしまった松虫姫と鈴虫姫。二人は一連の出来事に心を痛め、庵で自ら命を絶ってしまったとも、あるいは他の弟子らと法然を追って讃岐を目指すも果たせず、瀬戸内海に浮かぶ生口島の光明坊に入り念仏三昧の末、往生を遂げたとも伝えられています。


いずれにせよ、主を失った庵は荒れるがままとなるのが習い。
数年の後、流罪が解かれ帰京した法然はすっかり荒れ果てていた草庵跡に一寺を建立し、亡き愛弟子二人の名をとって「住蓮山安楽寺」と命名し、彼らの追善の寺としたと言うのがこの寺の起こり。
ただし、現在地には室町時代末期の再建時に移転して来たもので、元はさらに東へ1kmほど入った所にあったということです。



05安楽寺15墓

境内に入ってすぐ右手にある住蓮と安楽の墓所。




06安楽寺16墓


07安楽寺17墓


極楽に 生まれむことの うれしさに
      身をば仏に まかすなり     (住蓮)

今はただ 云う言の葉も なかりけり
      南無阿弥陀仏の み名のほかには (安楽)




そして、境内奥の石段を登った上には松虫姫と鈴虫姫の墓所もあります。


08安楽寺12墓


09安楽寺13墓


10安楽寺18墓







さて、特別公開時には本堂と書院にも上がることができます。



11安楽寺10書院額縁


12安楽寺09書院額縁


13安楽寺11書院庭園

書院から眺めるサツキの刈り込みの美しいお庭。
日が差したり翳ったりと目まぐるしかったのですが、その時々で趣きが変わって見えるのもまた風情があってよかったです。




14安楽寺06仏足石
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本堂前の仏足石。
その奥にはこの足の主(?)の仏様がおられ、足元には清爽な青い紫陽花が咲いていました。




15安楽寺07石仏


16安楽寺08紫陽花


17安楽寺19


18安楽寺20



秋の紅葉の時期には大変な人出で賑わうといわれる安楽寺の特別公開ですが、サツキの季節はまだそれほど認知されていないのか、お昼前でも意外に参拝者は少なく、ゆっくりと見て回ることができました。詩仙堂とどちらを先にするかで悩んで結局後回しにのですが、今回はこれで正解だったようです (^-^)v


【撮影日:平成22年6月5日】



《メモ》
  安楽寺 【地図】
   京都市左京区鹿ケ谷御所ノ段町21
   TEL:075-771-5360
   ※通常非公開、春夏秋に特別公開を実施
   拝観料… 400円(中学生以下無料)
   拝観時間… 9:30-16:30




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